FRONT SESSION

関 龍彦×安倍佐和子
「日本ビューティに、
ジャーナリズムよ、再び!」

2019.02.28

ここ数年で、マスメディアからの情報は、過大評価や予定調和、そんな印象が悪目立ちするようになった。SNSの普及によって拡散される情報に、振り回されるといった問題も浮上。ジャーナリズムが脆弱化しつつあるなかで、いったい何が真実なのか、改めて原点に立ち返ってみよう、そんな想いから生まれたコンテンツが「BEAUTY FAIRNESS」だ。第一線で活躍する美容のプロたちが、本音で語るFAIRNESSな記事の必然性について、BE-BANK主宰・BE-JOURNAL編集長の関龍彦と、ビューティジャーナリスト安倍佐和子が語り尽くす。。

安倍 佐和子 / ビューティエディター・美容ジャーナリスト

関 龍彦 / 講談社FRaUプロデューサー BE-BANK主宰 BE-JOURNAL編集長



安倍:BE-JOURNALを立ち上げようとしたきっかけは何だったのでしょう?

:主宰するBE-BANK発信のメディアをつくりたいと思っていたのと同時に、多くの化粧品メーカーが、ステマや誇大広告、嘘や予定調和の多い情報に翻弄されている現状をみて、なにかできないだろうかと考えたのがきっかけです。

安倍:BE-JOURNAL初のコンテンツ「BEAUTY FAIRNESS」で最初に取り上げたのがアユーラのリズムコンセントレートです。私も執筆させていただきました。

:人気の製品ですが、でも、ほんとうのところ、プロはどう評価しているのか、真実の声が聞きたいというメーカーからの要望もあって。ならば、「BEAUTY FAIRNESS」で最初に取り上げてみようということになったんです。

安倍:最初に薬事を気にせず書いてみてほしいと言われ、驚きました。

:ステマや褒めるだけの記事が増え、ジャーナリズムが不透明な現状に、メーカー側も危機感を抱いているよう。

安倍:マスメディアから発信される美容記事は薬事が厳しく、書けないことが多い中、SNS上では個々が効く、効かない、と発信。いったい何が真実なのか、確かに、ユーザーは混乱しますよね。

:最近はプロとアマの境界線も曖昧で、ジャーナリズムが育ちにくい環境になりつつある。

安倍:日本の薬事の厳しさは世界でもトップクラス、その中で美容ジャーナリズムが育まれてきたのですが、個人が自由に発言できるようになったのと同時に、薬事もいっそう厳しくなって。プロがプロの視点で発信しづらい環境になっているのを実感しています。

:だからこそ、トップジャーナリストがプロの視点で、きちんと語ることのできるメディアが必要なんですよね。

安倍:風通しのいい環境で、情報発信できるメディアということですね。

関 龍彦Tatsuhiko Seki
講談社FRaUプロデューサー BE-BANK主宰 BE-JOURNAL編集長
1987年講談社入社。ViVi、FRaU編集者を経て、日本初のビューティ月刊誌「VOCE」創刊準備室へ。2004年から6年間、同誌編集長。2009年には、VOCEのTV版「BeauTV VOCE」(テレビ朝日)をスタート。2010年より4年間、FRaU編集長。2016年より現職。

:加えて、ビューティジャーナリズムにもエンターテイメントな視点を再び、という想いもあります。キレイになるって面白いし、美容はエンターテイメントでもあることを改めて追求したい。単に現状をレポートするのではなく、夢やストーリー、カルチャーとしての提案も発信していきたいですね。

安倍:化粧品が生まれた背景やストーリーを知ることで、社会の仕組みを学んだり、未来予測までできますからね。

:最近はエシカルな視点が注目されていて、フェアトレードやマイクロビーズの問題など、化粧品を通して、世界をオンタイムで知ることもできます。

安倍:エシカルな視点は、世界のスタンダードになりつつあります。そういった意識やカルチャーもひとつの製品を通して伝えなければと思いますし、知識を得ることで、いい化粧品と出会える楽しみも増えていくんですよね。

:環境問題が深刻化するいま、“自分のキレイのために地球を汚してどうする”といった倫理観まですべてが、化粧品選びに関わってくる。そういう意識を持つと化粧品への向き合い方もかわってくるでしょうね。

安倍:だからこそ、正しい情報や真実をはやく伝えないと、と思います。SNSの普及によって情報の拡散力は格段にアップしたものの、間違ったことも同じように広がっていくというリスクも。

:マスメディアからの発信は薬事でがんじがらめになっていく一方で、個人発信で間違った情報が流れていても、それを取り締まる機関がないのが現実なんですよね。

安倍:ほんとうに価値があるものは何なのかを、プロとして伝えられるメディアがあれば嬉しいですし、本来はそれが健全な姿だと思います。

:プロもストレスフルだけど、受け取る側もどの情報が正しいのか、自分にとって有益なのか、疑うことが面倒になっている。どこか疲れているようにも見えます。

安倍 佐和子Sawako Abe
ビューティエディター・美容ジャーナリスト

出版社勤務を経て独立。女性誌や美容誌で編集・執筆活動を続けるほか、広告、マーケティング、講演など幅広い分野で活躍。日本初の美容月刊誌「VOCE」創刊メンバーとして、美容誌創世記を築き上げたひとり。認定ホメオパス、フィトテラピーアドバイザーの資格を有す。著書に「安倍佐和子のMy BEAUTY Rules 人と比べない美人力の磨き方」(講談社)がある。


安倍:うーん、ストレスフルな現状からもっと、風通しのいい環境を追求してかないといけないですね。

:日本初の美容月刊誌「VOCE」創刊時は、エンターテイメントや、いい意味でのゴシップが追求できた。当時のように、化粧品の機能性もストーリーも書けて、社会や未来のためにも役立つ。いい意味で、ジャーナリズムと化粧品メーカーがお互いに刺激しあう関係を保てるのが理想ですね。

安倍:最近は情報の価値が下げられ、捨てられることも多くなって。でも、BE-JOURNALでは、捨てられない情報を発信できたらいいなと思います。

:捨てられない情報と聞いて思い出したのが、VOCE編集長時代に、安倍さんが担当された「ベストコスメ」の記事。あるジャーナリストが書いた“いま、いちばん幸せになれるローション”という一言で、売り上げが爆発的に伸びた製品があって。まさにこれが、捨てられない情報という価値なんですよね。プロもユーザーも化粧品メーカーもみんながハッピーになれる、そのきっかけとなったことは今でも忘れられません。

安倍:プロの発言が人の心を動かしたということですね。「BEAUTY FAIRNESS」では、そんな捨てられない情報を、数多く発信していかないと。

:先日、FRaUで一冊まるまる「SDGs」特集号を発行。国や企業単位で地球環境と向き合い、エシカルな取り組みが必要な時代に、世界基準からやや遅れをとっている日本の現状をFAIRNESSにレポート。海外の最先端から日本での取り組みなどを丁寧に取材した記事は大きな反響を呼びました。

安倍:それもまた捨てられない情報ですね。美容においてのSDGsは今後ますます注目されそうです。

:日本はもともと清潔感や繊細さを大事にする美容大国。そのバックグラウンドを活かし、ビューティ市場が再び自信を取り戻すきっかけになればいいな、と。「SDGs」は今後、BE-JOURNALでも取り上げていきたいテーマのひとつです。

安倍:個人的に発信していきたいのは、性や年齢、国籍などあらゆるジェンダーを越えた先にある、新しい価値観でしょうか。キレイになる、心地いいことに、もっともっと意識を向ける人が増えたら、世の中から争いごとは減っていくと思っているんです。

:そうですね、健全で風通しのいいメッセージを発信し続ければ、美容という枠を超えて、なにかを変えるきっかけが生まれるかもしれません。その使命をじんわりと感じています。

安倍:BE-JOURNALがどんなメッセージが発信するのか、ますます楽しみです!